一般社団法人鉄道模型コンテスト(加藤浩代表理事)は、東京・新宿区の新宿住友ビル三角広場で「鉄道模型コンテスト2024全国大会」を8月2~4日に開催した。生徒が制作したジオラマ作品を学校単位で持ち寄る全国高等学校鉄道模型コンテストがメインのイベント。目の前の製品需要ではなく、体験から将来のジオラマづくり人口を高めるのが実施の狙いで、第16回の今回は過去最高の176校が参加した。加藤代表理事が「愛を込めた作品を見てもらい、多くの人に喜んでもらうイベント。今年もみなさんがつくったジオラマを大きな会場へ並べて紹介できることを大変、うれしく思う。この経験を良い思い出として残し、成長につなげてほしい」と呼びかけ、昨年の最優秀賞受賞校から代表者が登壇し、選手宣誓を行って、審査をはじめた。
アートを形にするという、ジオラマづくりに教育の観点を持たせた学生が対象のコンテスト。ジオラマと言っても市販の既製品を使うのではなく、木材や紙、プラスチック板、スポンジなど身近な材料を加工し、色付けして、仕上げている。走らせる列車やミニカーなどは卒業生が利用したものを使い回しており、製作費は4~5万円、日数が半年程度(最優秀賞受賞校は費用が5万円、日数は4カ月)という学校が多い。作品は文化祭でも展示するという生徒の発言も多数あり、費用としては許容範囲内で収まっている。
今回、最優秀賞を獲得したのは「『ようきてくれんさった』垣間見る岐阜」(※下線部分をクリックすると外部サイトに飛び、作品の写真が見れます)という作品を持ち込んだ東京・白梅学園清修中高一貫部。この女子校は文部科学大臣賞も受賞し、二冠となった。評価のポイントは目線への仕掛け。作品の正面から見えるのは壁と上部に木のみで、壁の逆側には崖があり、つくり込まれた観光地の風景は最下層に配置されている。列車の姿を見るには、上からのぞき込まなければならない。鉄道模型を楽しむ鉄則は今も昔も目線。この学校の生徒は水平位置ではなく、ドローンの様に上から映える目線を探すよう仕掛けた。スマホや動画配信などを使いこなす世代ならではの目線で仕上げた作品が最上位になった。
今回、この最優秀賞受賞校にはドイツのシュツットガルトで11月に行われるヨーロピアンNスケールコンベンションへ参加して受賞作品をプレゼンテーションする機会が副賞として与えられた。このコンテストが重視するのは参加者の体験。受賞した学生が海外で日本のモノづくり力を知る貴重な機会を創出するまでにイベント自体も成長した。