総務省が発表している家計調査で、単身世帯が玩具へ支出した2024年の年間金額は、1世帯当たり8110円だった【表1を参照】。前年からの伸び率は26・2%で、金額にすると1684円。コロナ流行前(2019年)の3582円から5年間で2・26倍成長し、2人以上世帯の年間支出額(8346円)に近づいた【表2を参照】。今回は家計調査の情報を活用し、ホビー系やキダルト玩具の消費主軸層である単身世帯について掘り下げた。
単身世帯の2024年玩具購入頻度は、前年から100世帯当たり10回落ちて年間192回だった。それでも23年に前年より51回増え、19年との差は71回増(率は58・7%増)に達している。金額との伸び率差から1回当たりの支出額は19年より42・6%アップした。値上げ分を織り込んだとしても、コロナ流行前より20~25%高額な商品を選ぶようになった。
単身世帯の2024年月平均支出額は1世帯当たり16万9547円(表4を参照)。この金額は2人以上の世帯(30万243円)に対して56・5%に該当する。品目別(表3)で同様の比率を算出すると、住居(129・2%)と玩具を含んだ教養娯楽(67・4%)が、この基準数値を上回った。両品目へ多く出費する傾向は以前からで、19年(基準数値は55・8%)も住居は121・9%、教養娯楽が63・3%となっている。一方、世帯別で品目ごとに24年と19年の対比率を出すと、単身世帯の教養娯楽費は4・9%増になる。これは単身世帯として増えた中で最低の伸び率。ここからは生活必需品の値上げに苦慮している姿が見える。単身世帯は物価高騰の波を受けながら費用を捻出し、玩具への出費を増やしている。
単身世帯の2024年実収入は月平均37万247円。19年の34万5336円から7・2%上昇した。しかし、今回の家計調査で算出された前年からの物価変動率はプラス3・2%。物価上昇は20年ごろから続いているので、増えた収入のほとんどは物価上昇が呑み込んだと考えられる。旺盛な玩具に対する消費意欲は、物価高騰や収入の面から必ずしも楽観視できない状況だと分かる。これに対しては、単身世帯が欲しがる商品を玩具メーカーがラインナップし続けることが重要なカギとなる。
※ ここで取り上げた需要などにハマる玩具を、おもちゃビジネスフェアと静岡ホビーショーの会場で探し、記事コーナーに掲載しています。そちらも併せてご確認ください。
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【お知らせ】
2025年6月号の新聞(ホビージャーナル)では、統計からの状況分析、国内で行われたイベントの内容と紹介されていた商品、ブラジルの市況、各国のアニメ視聴者に関する情報、流通と小売業の決算、団体の動き、楽曲からのトレンド分析、企業(大日本印刷、グッドスマイルカンパニー、メルカリ)の動向について取り上げました。今回はその中からピックアップし、ホームページへ掲載したのが、この玩具への支出を高めている単身者世帯の収支状況を分析した記事です。コロナ流行対策の巣ごもり期間に、玩具の良さを再発見してくれたのが、支出の伸びにつながりました。玩具業界は、これをどこまで伸ばせるのか注目しましょう。