カシオ計算機株式会社(高野晋社長)は、10月からAIペットロボット「Moflin」(メーカー希望小売税込み価格5万9400円)の海外展開をはじめる。感情が育つAIを搭載した「こころの、となりに、いつも」がコンセプトのMoflinは、モフモフな毛並みで、手のひらサイズのペットロボット(写真下)。よく話しかける人を飼い主として認識し、撫でる、抱きしめるなどの愛情表現を学習して、飼い主が好むしぐさや鳴き声で応えるようになる。これらを通じて形成される性格は400万通り以上。昨年11月7日に国内向けとして発売し、家電量販店を中心に取り扱われて、今年3月までに目標の7000台を販売した。国内で良い反響を得て、10月より米国とイギリスへの投入を決めた。

国内でこの商品の愛好者は30~50代の独身女性が主流。様々な事情からペットを飼えない人の孤独感へ寄りそい、心をケアするパートナーになっているという。同様のニーズが海外にもあると考え、日本と生活スタイルが似た国でマーケティング調査を行い、米国とイギリスへの投入を決めた。ここを皮切りに、他の国々へも徐々に広げる意向を示している。

同じ、事務機を扱うシャープ株式会社(沖津雅浩社長)も、ミーアキャットがモチーフのAIロボット「ポケとも」(写真上、価格はオープン、メーカー公式ECサイトでの参考税込み価格は3万9600円)を11月に国内市場へ投入する。こちらは話し相手になるタイプで、対話の内容、一緒に訪れた場所や風景などを覚え、友達へ進化するAIロボットに仕上げた。これも癒し効果を生み出し、寄り添うパートナーになることを目標に置いている。
事務機業界にはコピー機や複合機などで世界シェアのほとんどを日本企業が占める特長がある。これが業界構成企業にグローバル市場への知見と、仕事上の課題をICTなどを用いて解決へ導く企画力を持たせる原動力になっている。その中の2メーカーが個人の生活を豊かにするAIロボットを扱いはじめた。ここには人の気持ちの寄り添うAI搭載ロボットを日本のものづくり力として世界に示す可能性がある。玩具業界はこの流れを見逃さない方がよい。
【お知らせ】
2025年10月号の新聞(ホビージャーナル)では、統計(貿易、人口)を用いての状況分析、3市場(玩具、家庭用ゲーム、カプセルトイ)を合算した売上高推移、販売にドキドキを取り入れた商品の消費者購買意識、2024年度EC販売の世界規模動向、事務機メーカー2社がAIロボットを発売、海外市場に向けた新サービスの内容(TOPPAN、メルカリ)、国内で行われたイベントの内容、トレーディングカードゲームメーカーの決算、海外での玩具判決事例、米国向けの郵便発送一部停止、ラジコンメーカーの株式譲渡などについて取り上げました。その中から今月はこのカシオとシャープが発売するAIロボットの記事をピックアップしてホームページへ掲載しました。作業の効率化ではなく、人の心に寄り添うAIを搭載した日本製ロボットが世界市場席巻に向けて動きはじめます。

